「藪に坐る人」に向けてインタビュー⑨ 柳田詩織


「藪に坐る人」に向けてインタビュー第九弾は、灯台とスプーンの柳田詩織です。

これまでの活動をふりかえって


灯台とスプーンを結成して何かが劇的に変わったかというと、たぶん、そうでもありません。もし、この縁がなかったとしたら、どこかしらでお芝居と関わりながらマイペースに生きていたのではないかと思います。ですが、不思議なもので、今はもうこの場所がないことが考えられません。

日常の合間に浮かび、思考することを許してくれる場所。それは、お芝居をはじめた当初に感じていた、きらきらして、楽しくて、熱いばかりのものではなく、もっと落ち着いたところにあるものだと思います。

「楽しい」ばかりでは成立しない活動ではありますが、私にとっての演劇のポジションが、灯台とスプーンの活動を通して少しずつ変化してきているのだと、最近は思うようになりました。

 

「海をわたる獏」から「藪に坐る人」へ

魔女だの呪文だのファンタジー要素満載の本公演ですが、とても近いところに潜んでいる、あれやこれやのおはなしです。
生活をしているなかで、つい目を逸らしてしまうこと、なんだかなぁと感じてしまうこと、探し始めるとキリがないですが、普段は通り過ぎてしまうあれこれのどこかに「藪に坐る人」の世界が、[ハガツサ]という集落や[呪いの藪]がぽつりと存在し、そこには、少なくないひとが暮らしているのだと思います。

そこを選んで生きているひと、たまたま訪れてしまったひと、そこでしか生きることができないひと、様々な事情を持って集まった人々に、寄り添うことができたらなと、今はそういう気持ちでリリを生きています。

今回(いつもですが特に)、ファンタジーの中で生きるリリという役と向き合うにあたり、人格を構成しているコアというか、感覚というか、アイデンティティーを探る必要がありました。
そうしていますと、そのひとがそのひとで在ることの重さと言いますか、歴史と言いますか、ひとりの人物の存在の力に圧倒されることになりました。それは旗揚げ公演「狐/真夜中の共謀」の葛葉の時から何となくもやもやと受けていた感触で、「まがいものの乙女たち」の幹子、「海をわたる獏」の春海へと繋がり、リリでどうしようもなくなって溢れ出てきたような印象があります。

「海をわたる獏」は、のりちゃんのつくりだした夢でした。のりちゃんを、どうやって笑顔にするか、そればかりを考えていました。ちょっとでもうれしそうにしてくれると、それがとても嬉しくて、あったかくて、幸せでした。それは、春海がノリコという人物を心から好いていたからで、お互いを認め合い続けて築いてきた関係性によるものです。

(写真は「海をわたる獏」の春海。)

リリは、そのあたたかさをちゃんと知っている子で、だから、苦しい思いをします。結果、彼女が選ぶものから、お客さまに何を感じていただけるのか、大変興味深く思っております。

「藪に坐る人」の稽古について

有難いことに、この度お集まりいただいた客演の方々も、我々と共に悩んで、苦しんで、喜んでくださいます。皆さまがひとりの人間としてそれぞれの役を育ててくださったことで、物語の核となる部分を、彼らの関係性を、生きた人物として紡ぐことができたのではないでしょうか。この世界の住人たちが、どんな想いで、どんな決断を下すのか、戯曲が生まれてからここまできた道程を、役者の身体を通して感じていただけますと幸いです。

作品の見どころ

この度の世界観から、藪やハガツサを彩る音照、衣装、舞台美術は、福岡女学院大学学生ホール管理運営委員会の皆さまや、美鈴さま(HOI)、そして、つむぎさまのご協力のもと、これまでの灯台とスプーンとはひと味違ったものがご提供できるのではないかしらと、とても楽しみにしております。そちらもぜひ、ご期待ください。

灯台とスプーンのこれから

学生の頃の話です。作品に対して"社会に貢献しなければならない"と、学生を窘める教授がいらっしゃいました。当時はいまいち意図が掴めなかったのですが、現在になってわかったような気がします。おそらく、そんなに大仰なことでもないんです。ただ、それに気づくこと、受け容れること、踏まえて発信することは、なかなかむずかしいことなのかもしれません。

いろんな方のお力をお借りしながら、そういうお芝居をつくり続けてゆけたら、なんて豊かじゃないかしら。できるだけ、やわらかく、穏やかに。必要なところに熱を入れて、しゃんと、凛と、したたかにこの場所を守り続けられるだけの器量を、手に入れることが出来きたら、いいなあ、と思います。

最後に一言お願いいたします。

さいごに。
ここまで読んでくださってありがとうございました。

(私がこんなことを言ってしまってよいものか分かりかねますが、)今回の本も、作演が命を削ることで、繊細に進退を繰り返し、それは長い道のりを経て、皆さまへお披露目できるかたちへと成長いたしました。彼らを取り巻く環境は、少しずつ少しずつ変化を遂げて、息苦しさと、遣る瀬無さと、それらをすっぽり覆う愛情が、しっかりと、見つけられるようになったのではないかと思います。この戯曲の、奥底にある小さな光が、きっと皆さまに届きますように。

 

灯台とスプーン第四回公演「藪に坐る人」

日時:2017年11月
17日(金)19:00
18日(土)13:00/16:00/19:00
19日(日)13:00/16:00
※開演30分前に開場いたします。

会場:福岡女学院大学構内ハウイ館学生ホール(福岡市南区日佐3丁目42-1)

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