
「狐の鏡/透明な縄」に向けて 唐島経祐
灯台とスプーン第7回公演「狐の鏡/透明な縄」に向けて、本公演では毎回恒例の出演俳優さんによるコラムを投稿してまいります。
第三弾は、劇団HallBrothersの唐島経祐さんです。
また今回のコラムでは通し稽古中の様子をフォトグラファーの白石悠さんに撮影いただきました。
はじめまして。劇団HallBrothersで活動しております、唐島経祐と申します。灯台の作品に関わるのは初めてとなりますが、どうぞよろしくお願いします。
灯台とスプーンの稽古場について
とても穏やかな稽古場です。演出家と役者が一緒にシーンを作り上げる過程は、まるで灯台が遠くの海を照らすように、少しずつ形になっていきます。繊細で、演技や演出の方向性についてじっくりと向き合いながら進めていく時間が大切にされているな。と感じています。
とはいえ予想外の瞬間もあります。例えば突然「今日は粗通しをする」と言われた日があって、正直ちょっと驚きましたが、それも面白がって参加しました。

まるでスプーンで軽くかき混ぜるように、思わぬ遊び心や発見が生まれる瞬間があるんですね。
そうした柔軟なアプローチが、作品に新しい魅力や発見を加えてくれるのだと思います。
つまり、灯台とスプーンというのはそういうことなのだと。笑
自由に創造を広げられる空間であり、計画的に進めつつ、時には遊び心を持って試行錯誤することができる場所です。そんな環境で作品が育っていく過程は、毎回新鮮で、とても魅力的だと思っています。
「狐の鏡/透明な縄」の作品について
この作品は、意図的にテキストやセリフが完全に明示されていない部分が多く、観客は演者の演技や演出を通じて、その意図やストーリーが徐々に明らかになる構成になっています。
そのため、難解に感じることもあるかもしれませんが、実際には何も知らずに観るだけでも十分に楽しむことができると思います。
表面的な部分にとどまらず、細かいディテールや演出に隠された意味に気づくことができれば、より深くその世界に入り込むことができるのでは、と思います。

今回自分が演じる役について
扇田(せんだ)という役は、どこにでもいそうな普通の大学生です。裕福ではなく、特別な背景があるわけでもありませんが、深刻に考える必要はありませんでした。
しかし家族の問題がきっかけで彼の生活は大きく変わります。身内が倒れ、金銭的な困難に直面した彼は、気づかぬうちに闇バイトといった類のものに手を出してしまいます。この選択によって、扇田は過ちや後悔と向き合いながら葛藤していくことになります。

彼のドラマが深く描かれるわけではなく、扇田の内面的な変化が物語の中心ではありません。それでも、扇田というキャラクターは非常に重要な役割を持っています。まるで舞台装置のように、彼の存在が周りの登場人物たちに影響を与え、物語を動かしていきます。
作品について自分が感じていることや、みどころについて
タイトルにある「透明な縄」という言葉が、普通は物理的な束縛を思い浮かべますが、この作品では目に見えない「縄」が登場人物たちに絡みついていて、その心の重さや葛藤がとても印象的だということです。目に見えないものだからこそ、その「縄」の存在感がより強く感じられ、登場人物たちがどう解放されていくのかが大きなテーマになっていると思います。そんな目に見えないものが作品の中で重要な意味を持っているところが、この作品の魅力だと感じています。

みどころとしては、セリフの合間に交わされる目線や呼吸のシンクロなど、言葉ではなく体で表現される心の動きや登場人物たちの関係性に注目していただきたいです。言葉にできない感情を、繊細に伝えることができたら、きっと作品の深みがより伝わるのではないかと思います。
さいごに

どんな作品でも役を演じる時に考えているのですが、作品がただの「物語」ではなく、何か心に残るものになればいいなと思っています。
作品がもつ光と言いますか、輝きのようなものをお届けする事ができたら、とってもワースだなと思います。
是非劇場に足を運んでくださーい!

灯台とスプーン第7回公演「狐の鏡/透明な縄」
2025年3月29日(土)〜30日(日) 福岡女学院大学ハウイ館学生ホール