
「狐の鏡/透明な縄」に向けて 隠塚詩織
灯台とスプーン第7回公演「狐の鏡/透明な縄」に向けて、本公演では毎回恒例の出演俳優さんによるコラムを投稿してまいります。
第五弾は、隠塚詩織さんです。
また今回のコラムでは通し稽古中の様子をフォトグラファーの白石悠さんに撮影いただきました。
はじめまして、隠塚詩織です。
漢字にすると画数が多過ぎてゴツゴツした岩みたいだなと思ってるので、文字にする時は、ひらがなで自分の名前を書くことが多いです。いんつかしおりと申します。ゴツゴツの真逆になります。ふにゃふにゃでいいっすよね、なんか。

お互いが初めましての現場
今作出演する皆様、私は漏れなく初共演でして、私だけかなーと思っていたら、ほぼほぼお互いが初めましてで、初共演だらけだったんですよ。
福岡で9年(まだ9年ですかね、されど9年ですかね)演劇を続けているのですが、こういうことがあるのはとても嬉しい反面、すこしぎこちなくて、というスタート。
そういえば、オフライン稽古が始まったばかりの時、まだ、みんな少しばかりそわそわしていたと思うんだけど、その日が節分だったことにあやかり、稽古場で豆蒔きをしませんか、と提案しました。
皆快く豆を投げてくれて、嬉しかったです。(鬼役をしました)
ちょっとした小話です。

豆蒔きがあったからというわけでもなく、稽古を重ねていくうちに、ゆっくりと距離が縮まっていったと思います。それぞれの稽古場での居方や、ぐらぐらと煮えたぎっている、作品への気持ちに触れたりしながら、お互いのことを、少しずつ知っていったというか。
口数が多いタイプが集まった、というわけではない気がしているのですけど、それはそれで、みんなじっと、そっと、お互いを見つめて作品を作っているな、と思いました。

あと、みんなで賑やかに話している時や、作品を分解してウンウン唸っている時などの自分たちの様子が、「狐の鏡/透明な縄」の登場人物、また、関係性が重なってみえる時があったりして、このメンバーで過ごした時間を感じてとても嬉しかった最近です。

さて、「狐の鏡/透明な縄」は、民俗学研究室のゼミに所属しているものもの、或いはそこに連れて来られたものの、『今』のお話です。今作、私が演じる「烏山千春」は、しっかり『今』を生きているタイプです。なんなら『未来』もしっかりと考えて動くタイプというか。とは言っても、完璧な人間では無いというか、実は『今』を必死に生きていて滑稽というか、そんなところが私とちょっとばかり似ている気がしていて、楽しく稽古しています。
作品の中で、どういう動きをするのか、そして『今』に繋がるまでのお話を、是非覗きに来てください。
群像劇なので、登場人物それぞれのお話を追いかけて楽しんでくだされば、嬉しいです。

灯台とスプーン第7回公演「狐の鏡/透明な縄」
2025年3月29日(土)〜30日(日) 福岡女学院大学ハウイ館学生ホール