第7回公演「狐の鏡/透明な縄」終演しました

灯台とスプーン第7回公演  「狐の鏡/透明な縄」無事に終了いたしました。ご来場いただいたみなさま、関係者並びにご協力いただいたみなさま、また気にかけてくださったみなさま、誠にありがとうございました。

今回出演いただいたキャストの皆さんです。左から、小葉役:草村憲伸さん、扇田役:唐島経祐さん(劇団HallBrothers)、烏山役:隠塚詩織さん、堀川役:柳田詩織、葛葉役:大間萌夏さん、筒井役:久保文恵。

2025年の年明けからの稽古でしたが、稽古を重ねるごとにしっかりと関係性が育ち、関わり合いがそのまま舞台上に現れていることを感じる瞬間も多くありました。それぞれのコラムも公開されていますので、ぜひお読みください。

10年後の狐

柳田のコラムにもあったとおり、「狐」の再演、もとい再創作については5年ほど前から話がありました。2024年から初稿を書き、思い入れがある分何度も書き直しを重ね、企画をスタートしました。

母校であり、舞台創作の原点である場所・福岡女学院大学の学生ホールでの上演が叶ったこと、そして過去の共演者である福田みゆきさんが狐のグッズ販売をしてくださったり、そのほかにもさまざまな形で灯台とスプーンの作品を作り上げた方がたが再び集まる機会にもなりました。

10年前からかかさず観にきてくださるお客様もいらっしゃり、数名の方は「狐/真夜中の共謀」を観劇されたり、当時のグッズを持ってきていただいたお客様もいらっしゃいました。誠に感謝です。今回初めてご来場いただいた方からも、さまざまなご感想をいただき、ありがとうございました。(アンケートでのご感想は、後日掲載予定です。お待ちください。)

以下にパンフレットに掲載した田村の挨拶文を再掲載いたします。


ごあいさつ

「狐の鏡/透明な縄」は、灯台とスプーンの旗揚げ公演「狐/真夜中の共謀」を再構築した新作です。2015年、大学を卒業して一年後に「共謀」の初稿を書いていましたが、ひどいバッドエンドで、柳田さんから人生初の「書き直してほしい」を言われたことを覚えています(田村がひどいバッドエンドを書いて、柳田さんに書き直してと言われる流れは、その後たびたび起こっています。笑)。書き直したとはいえ、学生時代から社会人の境目に初期衝動で作られた作品は今読み返したらきっとひっくり返って転がりたくなるような本だろうと思います。灯台とスプーンのはじめの作品として、祈るような気持ちで公演をした思い出があります。

10年が経ち、そのぶんいろいろなことがありました。30代になり、コロナ渦を経験し、新しい出会いもあれば別れもありました。
日々は物語のように都合よく、きれいにまとめられるようなものではありません。
でもその中でつかみとってきた少しずつの積み重ねで、相変わらず物語を作っています。はじめは現実と折り合いをつけたり、癒やしのために作っていたものが、少しずつその意味を変えて、社会的な視点を持つように変化しているとも思います。

世間を見渡すと、創作なんてしなくてもお金をたくさん稼げたら上がりという価値観や、推しに貢ぐことが当たり前(そのためにやはりお金を稼ぐ)といったことが、常識のようになっている気がします。マーケティングを制した人が社会的に勝利するような、そして勝利をするために、勝ち馬に乗るために、みんながんばっているように見えてしまうことがあります。

そんな中で、正直いつも作品を書きはじめるときは「もうやりつくしている」と思います。ずっといい古典が、ずっと面白い作品がこの世には存在していて、わざわざ自分たちが作らなくともいいのではないかとも、うっすら思います。
ちょっとしたエンタメはネトフリやアマプラで見ればいい。漫画だって寝ながら無料で読めてしまうし、飽きたらすぐ離脱すればいい。わざわざしんどい思いをして、何をしてるんだろうなあと言いながら、演劇という時代に取り残されたやり方のカードを、にぎりつづけています。
もちろんそれは、「誰かに引かされた」カードとは違いますが、文化、の方を選び、それが報われないシーンにこれまで何度も出くわしてきました。何をしてるんだと思いながらも、やはりどうしても、創作を続けるのだろうなと思います。

自分やだれかの不幸に出くわしたり、足元に落とし穴が転がっているような気分になるたびに、旗揚げ公演で上演した「狐」のテーマを思い出し、いつかまた作り直したいと思いつづけていました。そうしてこの10年の間、堀川と葛葉がいろいろな姿で、私と柳田さんの頭の中にはいました。
何度も書き直しを行い、結果、全くあたらしい物語ができあがったと思います。そしておもわず、とても楽しくあたたかな人たちが集う稽古場が待っていました。

タイトルにあるように、女性に限らず現代の若者をとりまく格差・貧困、いつでも足を踏み外せてしまう現実に対面した人たちが、嵐の後で自らにまとわりついていた透明な縄をほどいていく物語を目指し、稽古場で起こることを大切に創作をつづけてきました。正直、この創作期間が終わることがとても、さびしいです。

あらためて、どうもはじめまして、灯台とスプーンです。
お越しくださり、ありがとうございます。
同じ時間を過ごしてくださりうれしいです。

田村さえ


ここまで読んでくださりありがとうございました。
これからも、新しい物語創作を続けていこうと思います。

今後とも灯台とスプーンをよろしくお願いいたします。


スタッフ・クレジット

STAFF
照明:古野裕基(そめごころ)
音響:髙松脩人
音響プラン:久保文恵
宣伝美術:田村さえ
制作:柳田詩織
プロモーション協力:珠緒(Mr.daydreamer)

協力:
そめごころ 劇団HallBrothers
Mr.daydreamer
LIGHTHOUSE CAMP CIRCLE
佐竹詩(福岡女学院大学人文学部言語芸術学科)
中島和那(福岡女学院大学人文学部言語芸術学科)

主催:灯台とスプーン
後援:須川渡(福岡女学院大学人文学部言語芸術学科)
   福岡市、(公財)福岡市文化芸術振興財団