
「狐の鏡/透明な縄」に向けて 久保文恵
灯台とスプーン第7回公演「狐の鏡/透明な縄」に向けて、本公演では毎回恒例の出演俳優さんによるコラムを投稿してまいります。
トップバッターは、入団後初出演となる久保文恵です。
また今回のコラムでは通し稽古中の様子をフォトグラファーの白石悠さんに撮影いただきました。
こんにちは。灯台とスプーンの久保です。
先日入団のご挨拶をした際に、多くの方々に温かいお言葉を頂きとても嬉しかったです。ありがとうございました!
入団後初めての本公演を迎えます
「狐の鏡/透明な縄」は私が入団してから初の公演となり、灯台とスプーンの一員となったことを改めて実感しています。
おそらく本公演で私の演技を初めて観るという方も多いのかなと思います。
私の演技が皆さんの目にどのように映るのか不安な気持ちもありつつ、それ以上にワクワクしている自分もいます。

私が灯台とスプーンの公演に携わるのは今回で2回目です。前回と座組のメンバーも大きく異なりますが、稽古場でのコミュニケーションを大事にしているところは変わらないと感じています。
不安な箇所があれば相談しやすい雰囲気となっています。自分はつまづいているつもりはなくても、他の役者の会話や相談を聞いて気付かされることも多々あります。

私が役者として舞台に立つのは約6年ぶりになります。かなりのブランクがあるため足を引っ張ってしまうのではと不安も大きく、実際自身の実力不足を痛感しています。それでも気負いすぎず楽しく稽古が出来ているのは、座組のメンバーの温かさや稽古場の雰囲気のおかげです。
「すべてが終わってしまった後」の物語
あらすじにもある通り、本作品は「すべてが終わってしまった後」の物語です。
「すべて」とは一体何か…というのは是非観に来て頂いて確認してほしいのですが、終わってしまったことに思いを馳せることがある人は少なくないと思います。

終わってしまったことに対してどう向き合うのか、そもそも向き合うのか、向き合う必要があるのか。
これらに軸を置いた作品となっていると思います。
……と書くと、ものすごく暗いお話のようですね(笑)
お察しの通り、ドッカンドッカン大爆笑コメディではないですが、研究室での日常の空気感を座組みんなで作り上げているところです。
言葉の端々だったり小道具だったりで、クスッと笑ってしまう箇所もちょこちょこ散りばめられています。観ていて笑いたくなったら、我慢せず是非声に出して笑ってくださいね!
今回演じる役について
私は筒井まどかという大学3年生を演じます。
筒井は民俗学研究室に所属していますが、私自身は大学で国語学・国文学研究室に所属していました。
ギリギリになると研究室に泊まる人も多く、私も例に漏れず、卒業論文の締切直前には友達と一緒に研究室で年越しを迎えたこともあります。周囲からは「ブラック研究室」とか言われてましたが、同士達と共に興味のある分野で演習や卒業論文に取り組むのは楽しかったな〜と、ついつい自分の学生時代を思い出します。

筒井は研究室に絶対泊まったりしないだろうし、他のゼミ生もそんなことしなさそうです(笑)
演技をキャッチボールにたとえると、私は他の役者が投げてきたボールをどう受け取るか、どうやってボールを返そうか考えるのが比較的得意で好きです。
ただ、初手で自分からボールを投げるのはすごく苦手です。周囲がどう思っているのか気になったり、和を乱すことに抵抗があったりする私の性格が、如実に演技にも表れているなあと思わず苦笑いしたくなります。
ボールを自ら投げてくれる役者が多いのでついつい甘えていたのですが、稽古を重ねていくにつれ、筒井は自分からボールを投げられる人物だと気付きました。
ここ最近でようやく筒井が初手でどうやってボールを投げるのか感覚をつかみ始めたところですが、まだまだ模索中です。

おわりに
作品を鑑賞する際、私は作品に救いを求めてしまいます。
「ひょっとして、私が思うよりこの世界は案外悪くないものかもしれない」と思わせてほしいと願ってしまいます。
この願望は現実逃避に見えるのかもしれないけれど、その救いのおかげで私はなんとか前向きに毎日を過ごせています。
本作品を観た方にも救いになれば…というのはあまりに烏滸がましいですが、ほんの少しでも気持ちが軽くなれば、誰か一人でも心に残る作品になれば、とやはり願わずにはいられません。
長々と書いてしまいましたが、最後までご一読頂きありがとうございます。
皆様のご来場を心よりお待ちしております!

灯台とスプーン第7回公演「狐の鏡/透明な縄」
2025年3月29日(土)〜30日(日) 福岡女学院大学ハウイ館学生ホール