「あめふりヶ丘夜想曲」にむけてのコラム 柳田詩織


みなさま、こんにちは。ご無沙汰しています。

灯台とスプーンが創作し、みなさまにお届けするのは、昨年の9月、熊本でお世話になったDENGEKIぶりですね。たった1年前のことなのに、もう、随分とむかしのことのようです。

昨年の今ごろは、まさかこんな世の中になるなんて、想像もしていませんでした。本当に、世界が一変してしまいました。今までの常識も、安心も、特に意識せずに生活できていたあれこれが、一気に襲いかかってきたみたい。

身近なところでいえば、演劇や映画の中止、延期は、とても堪えました。たくさんの人が、自粛に飲み込まれる様子を目の当たりにするのは、いくら仕方なくたって、しんどいですよね。少しずつ緩和してきたとはいえ、いつまたあちらに転ぶとも知れないし、何より、望まずに得てしまった経験は、これからもずっと、心のどこかに、よくない記憶として澱み続けてしまうのだと思います。きっと、誰だって同じような気持ちを抱えて、なんとか、生きているのでしょうね。

一方で、私たちが制約された中でどんなに懸命に生活を続けようと、環境は甘やかしてはくれません。それとは関係のないところで怪我をすることも、あるいは亡くなってしまう可能性だってある。自然災害だって待ってはくれない。地球はまわっているんだな、なんて当たり前なことをとても実感しています。コロナ下以前からあった不幸や不運は、変わらずそこで見え隠れしているのです。

ごめんなさい。今回の脚本を振り返るにあたって、やっぱり今持て余している虚しさや悲しさを避けては通れませんでした。「あめふりヶ丘夜想曲」は、降ってきてしまったどうしようもできないことと向き合い、たたかう、4姉妹の物語です。同時に、私たちの現在を写し出した作品でもあります。もちろん、記憶に新しい台風や豪雨災害についてを灯台とスプーンなりに見つめたものではありますが、彼女たちが抱える気持ちのいくつかは、この瞬間にも、私たちが感じている息苦しさや無力感ととても近しいものだと思うのです。彼女たちの葛藤を通して、何かを見つけていただけたなら幸いです。

また、この高見家のおはなしには、家族だからこその気安さと、ぎこちなさと、甘えとモヤモヤとが渦巻いています。身内との衝突って、ならではの見苦しさがありますよね。他人だったら見過ごせるはずのことが許せない、私にも覚えがあります。私だって、何かにつけて許せないなって思われているのでしょうし。お互いに、うまく話し合えないまま、なんか釈然としない思いだけが膨らんでいく。でもそれって、(色々なケースはあるでしょうが、)期待以外の何ものでもないですよね。面倒だけど。その面倒を億劫がってしまったら、お終いな気もします。気をつけないとな…

最後に、こんな状況下でも、いいことだっていくつもありましたよ!ということについても触れておきます。まずは、なんと言っても諫早独楽劇場さんとの出会い。代表管理人の寺井さんには本当に、大変よくしていただいています。いつか、何かのタイミングでお礼ができたらなとは考えていますが、まずは、あたたかく待っていてくださったお気持ちに応えられるものをお届けしないといけませんね。大詰めです。もう少し先に進めて、もう少しよいものを、今できる精一杯をお見せしたいです。

つぎに“ゆりりん”こと後藤百合香さんが灯台守(使ってみたよ田村さん…!)に仲間入りしたこと。大人になってからピアノをはじめたそうなのですが、それって、ものすごくバイタリティに溢れていますよね。私はもともとそういうキャパシティが狭くて、年齢を重ねていくにつれてさらに薄らいできている感覚があるのですが、彼女はそれをひたむきに楽しんでいます。演劇だって初めて飛び込んできた世界で、まっすぐにぶつかってきてくれます。それは単なる若さ、ではなくて、後藤さんの努力によるものです。気ままな私たちと一緒にたくさん考えてくれて、ありがとう。ゆりりんのご活躍、ご期待ください。

それから、約2年ぶり、安藤さんが帰ってきました。出演は「藪に坐る人」以来ですね。待っていてくださったみなさま、ありがとうございます。安藤さんは相変わらず、生真面目で頑張り屋で、ちょっと頑固者です。久しぶりに同じ創作の場に立ったけれど、これがなかなか大変!(笑)最初のうちは、気持ちや認識の擦り合わせからスタートしました。ふぅ。でも、考えてみたら、いつだって、そういう面倒くささを含めて稽古してきたなって。それができる豊かさが、ああ、灯台とスプーンだな、とも思えて、ちょっと嬉しくなりました。安藤さん、お芝居もピアノの演奏もとっても素敵なので、楽しみにしていてくださいね。

嬉しいも悲しいも地球がちゃんとまわっているからこそですね。

私たちは、それぞれ、今できることをするしかないのだと思います。

欲を言えば、生で感じていただけると最高なのですが、今回、独楽劇場さんのご厚意でYouTube配信をしていただける運びとなりました。時間が合わない、遠出は難しい、でも興味は持ったぞ、という方は、そちらから、ぜひ遊びにいらっしゃってくださいな。


「あめふりヶ丘夜想曲」
作・演出 田村 さえ

 出演:安藤 美由紀  後藤 百合香  田村 さえ  柳田 詩織

あめふりヶ丘と呼ばれる高台の住宅地にかつてピアノ教室を営んでいた高見家の実家がある。その日は長女の結婚をきっかけに、離れて暮らしていた四姉妹全員が揃っていた。しかし、昼過ぎから降り始めた雨は次第に強まり、テレビでは十六年ぶりの豪雨災害になる可能性を報じている。この丘に降った雨はいつも、丘の下の街に向かって流れていく。

家の中にとり残された姉妹たちの会話劇。

日時:
2020年
10月24日(土)18:00
10月25日(日)13:00/16:00(
開場は開演の30分前

★10/25  16:00の回はライブ配信あり。(アーカイブは11/8まで視聴できます)

会場:諫早独楽劇場(長崎県諫早市八天町KGビル2F)
※会場に駐車場はございません。近隣駐車場をご利用ください。

料金:2,000円(駄菓子お土産付)
ご予約フォームはこちらhttps://www.quartet-online.net/ticket/amefurigaoka

【ライブ配信について】
10/25  16:00 ライブ配信無料(投げ銭制)
ライブ配信はこちら【公式】コマゲキジョウ https://www.youtube.com/channel/UCzrj8CvHj75K3bOFwbCtgbQ

無料配信ですが、ぜひ投げ銭(駄菓子購入)をお願いいたします。
投げ銭はこちらhttps://komqagrkijou.thebase.in/